研究概要 |
(1)虚血再潅流肺傷害:平成17年度に作成したラット虚血再潅流モデルで虚血が肺胞水分クリアルンスに及ぼす影響を研究した。その結果、2週間の慢性虚血による肺水分量は増加し、肺胞水分クリアランスは亢進した。肺水分量の増加は肺リンパ輸送能力の低下が原因ある。肺胞水分クリアタンスはα1-Na,K-ATPaseのmRNAとプロテインの発現が亢進していたことより、その輸送蛋白発現が原因と考えられた。予想に反してβ2交感神経刺激薬の効果はなく、その発現は減少していた。内因性カテコールアミンの関与はなかった。慢性肺虚血は肺胞水分クリアランスを亢進し、肺水分の増加を抑制してことが示唆された。(Journal of Thoracic Cardiovascular Surgeryに投稿し、修正原稿の審査待ち)(2)急性膵炎肺傷害:Taurocholate注入によるラット膵炎モデルを作成した。そのモデルで膵炎が肺胞水分クリアランスに及ぼす影響を研究した。肺胞水分クリアランスは膵炎発症後4時間で亢進し、24時間で正常値に戻る。血漿エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミンは上昇し、副腎摘出によりカテコールアミン値の上昇と肺胞水分クリアランス亢進は抑制される。β交感神経遮断薬は肺胞水分クリアランスの亢進を抑制しないが、α1-α2-交感神経遮断薬は肺胞水分クリアランスの亢進を抑制した。膵炎では内因性カテコールアミンが分泌され、α1-α2-交感神経受容体を介した肺胞水分クリアランスの亢進し、肺内水分量が調節されていることが示唆された。(論文作成中)(3)RAGEノックアウトマウス:金沢大学よりRAGE(Receptor for advanced glycation end products)ノックアウトマウスを譲り受け、繁殖させた。平成19年度に研究に使用する。(4)ヒト切除肺での研究:肺癌のため切除されたヒト肺より肺胞洗浄液を採取して、凍結保存中である。平成19年度に炎症マーカー、上皮細胞マーカーを測定する。
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