研究概要 |
デノパミン(β_1刺激薬)が肺胞水分クリアランスに及ぼす影響を検討した。デノパミンにより肺胞水分クリアランスは濃度依存的に亢進した。デノパミンの効果はβ_1遮断薬とCystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遮断薬(CFTRinh-172,glibenclamide)により抑制された。β_1刺激薬により肺胞水分クリアランスは亢進し、その作用はCFTRチャンネルを介する。 ラットで慢性肺虚血と急性膵炎モデルを作成し、肺胞水分クリアランスに及ぼす影響を研究した。慢性虚血によりα1-Na,K-ATPaseの発現が亢進し、肺胞水分クリアランスが亢進する。急性膵炎では内因性カテコールアミンがα受容体を刺激して肺胞水分クリアランスは亢進する。 肺傷害患者で血漿および気道内浮腫液のカテコールアミン濃度を測定し、上昇することを確認した。しかし、内因性カテコールアミン濃度は肺胞水分クリアランスを上昇させるほどの上昇ではなかった。ヒト切除肺で肺胞水分クリアランスを測定し、エピネフリンの気道内投与により肺胞水分クリアランスは亢進し、その効果はCFTRチャンネルを介することを報告した。 脂質代謝と肺胞水分クリアランス関連を研究した。ZuckerラットのObese、LeanラットとSDラットで肺胞水分クリアランスを研究し、ナトリウムイオンチャンネル、Na,K-AIPase、β受容体の発現を調べた。その結果、Zuckerラットでは肺胞水分クリアランス機能が亢進し、α1とβ1Na,K-ATPaseのmRNA、β2受容体mRNAの発現が亢進していた。また、内因性カテコールアミンの上昇はなく、亢進した肺胞水分クリアランス機能はβ受容体の阻害剤で抑制されたことより、β受容体の機能亢進を介した肺胞水分クリアランス亢進の機序が示唆された。
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