髄膜腫のホルモン療法への基盤を確立するために、髄膜腫におけるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)と受容体(GnRH-R)の発現とその意味について臨床病理学的検討した。【対象と方法】髄膜腫82例を対象にGnRH-RとGnRHおよびホルモン受容体のPgRおよびERの発現を免疫組織化学的および臨床病理学的に検討した。【結果】1.臨床的特徴:男性27例、女性55例で1:2と女性に多く、平均年齢は58歳、腫瘍径は平均3.70cmであった。悪性度は良性が78例(95.1%)で、異型が3例、退形成性が1例であった。2.GnRH-R、GnRH、PgRおよびER発現の免疫組織化学的検討:GnRH-Rは82例中78例(95.1%)に発現がみられ、細胞膜および細胞質に陽性反応を認めた。GnRHでは82例中49例(59.8%)に発現がみられ、細胞質に陽性反応を認めた。PgRは82例中67例(81.7%)で陽性反応を認め、PgR LIは平均53.00±33.12%であった。ERは陰性であった。Ki-67 LIは平均0.32±1.32%であった。Ki-67は8例(9.8%)で陽性反応を認めた。3.GnRH-R免疫組織化学的発現の有無と相関関係のあったものはPgR LIであり、GnRH-R陽性のものはPgR LIが有意に高かった(p=0.002)。GnRHの免疫組織化学の結果では、臨床病理学的パラメーターのうち性別に有意差を認め(p=0.02)、女性のGnRH陽性が55例中28例(50.9%)に対し、男性では27例中21例(77.8%)と高率に高い傾向を示した(p=0.02)。【考察】髄膜腫においては、従来報告されてきたホルモン受容体より、GnRH-Rの発現が多いことが判明した。また、腫瘍自身がGnRHを産生している可能性が高く、細胞増殖の制御の一端を担っている可能性が高い。
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