研究概要 |
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその受容体(GnRHreceptor, GnRH-R)は、性ホルモン依存性腫瘍に発現し、その自己分泌機構により細胞増殖の制御機構を担うといわれている。さらに、スーパーアゴニストを用いた癌のホルモン療法が実用化されている。髄膜腫は、中高年女性に好発する良性脳腫瘍で、以前から性ホルモンの関与が示唆されている。本研究では、髄膜腫82例を対象にGnRH-RおよびGnRHの発現を免疫組織化学法と逆転写-PCR法を用いて検討した。同時にプロゲステロン受容体(PgR)、エストロゲン受容体(ER)と増殖能の指標であるKi-67の免疫組織化学的検討および臨床病理学的事項との相関についても併せて検討した。髄膜腫におけるGnRH-Rの機能を評価するため、6例を細胞培養し、GnREのアゴニストおよびアンタゴニスト投与による細胞増殖解析を行った。髄膜腫におけるGnRH-RのmRNAおよび免疫組織化学的発現は、それぞれ100%と95%であり、G且R且のmRNAおよび免疫組織化学的発現は、86%と60%であった。GnRH-RとPgRの免疫組織化学的発現間に、正の相関関係を認めた。臨床病理学的検討では、GnRRの免疫組織化学的陽性例が男性例で有意に多かった。培養細胞の6例全例において、アゴニスト投与により有意な増殖を認めた。また、アゴニストとアンタゴニストの同時投与を行った3例では有意な増殖はみられず、その作用が受容体を介するものであることが確認された。アンタゴニストの単独投与では、GnRRを発現していた1例において細胞増殖抑制がみられ、自己分泌機構の存在が示唆された。以上より、多くの髄膜腫はGRRH-Rを発現し、GnRHが細胞増殖の調節因子の一つとして働いており、一部に自己分泌機構が存在することが示唆された。
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