研究課題
基盤研究(C)
悪性グリオーマは極めて難治性で予後不良の脳腫瘍であり、その要因の一つに放射線治療抵抗性があげられている。電離放射線の細胞毒性は細胞内のDNA傷害、特にDNA二本鎖切断にあるといわれているが、この修復には、ほ乳類細胞では一般にKu70を中心とした非相同末端結合が中心的な役割を演じている。そこで、悪性グリオーマにおいて、Ku70の発現を抑制すれば、腫瘍細胞の放射線感受性が高まる可能性がある。我々は、悪性グリオーマ細胞を用いてKu70の発現をsiRNAにて抑制し、細胞増殖およびin vitroならびにin vivoでの放射線感受性への効果について検討した。本研究では、将来の臨床応用を考慮し、siRNAの細胞内導入には臨床使用が可能なHVJ-Eベクターを用いた。結果:ヒト悪性グリオーマ細胞へのKu70 siRNAの導入により、Ku70のRNA、蛋白質ともに著明な発現抑制がみられた。また、Ku70 siRNA導入細胞では、その対照と比べ、有意に放射線感受性が亢進した。さらに、ヌードマウスへのグリオーマ移植モデルでは、HVJ-Eをベクターとして導入したKu70 siRNA投与群での放射線照射は、その対照群と比べ、有意に腫瘍増殖を抑制し、腫瘍縮小効果が得られ、マウスはより長期生存した。結論:Ku70の発現抑制によるDNA修復阻害は、悪性グリオーマにおいて放射線感受性を高め、新たな放射線治療法の開発につながる可能性が示唆された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (7件) 図書 (1件)
Int J Oncol 30
ページ: 793-802
Int J Oncol 29
ページ: 73-81
Ann Nucl Med 20
ページ: 287-294
Cell Biology (Celis JE, ed) (Elsevier Science (USA)) Vol.1,
ページ: 367-372