研究概要 |
ラットにおけるencephalo-myo-synangiosis(EMS)モデル作成時にHIF-1α naked DNAを脳表に散布し、血管新生の誘導を評価した。EMS術後5日もしくは10日後に、3-0 nylon sutureを右総頚動脈経由で頭蓋内へ挿入し、中大脳動脈を閉塞させた。この中大脳動脈領域の脳梗塞モデルでコントロール群と血管新生群との比較検討を行った。中大脳動脈閉塞24時間後に脳を摘出し、2mm幅にスライスし、2,3,5-triphenyltetrazoliumchloride(TTC)により示された脳梗塞巣はHIF-1α投与の血管新生群でコントロール群に比較し小さかった。また、術後5日目より10日目の群でより縮小する傾向にあった。HIF-1αの局所投与で新生血管が発生し、外頚動脈系と脳表との側副血行路が発達し、脳梗塞を軽減した。脳虚血に対してHIF-1αが有効な治療手段と成り得る事を示していると考えられた。脳虚血ストレスに対して脳神経細胞はHeat Shock Protein(HSP-70)の産生等の各種ストレス応答を示す。Geranylgeranylacetone(GGA)は長く胃薬として処方されていて、腸管や心筋にHSP-70を発現させると報告されている。神経細胞に関する報告は無く、以下の実験も行った。GGA内服ウィスターラットを用いて、フローセン麻酔下で右外頸動脈経由で内頸動脈に4-0 nylon sutureを挿入し右中大脳動脈閉塞モデルを作成した。脳梗塞の体積をコントロール群と比較した。GGA内服で神経細胞にHSP-70の発現が観察された。これらの細胞は虚血耐性を獲得し、中大脳動脈閉塞モデル実験でも脳梗塞巣がコントロール群に比して有為に小さかった。これらの研究結果が臨床応用可能となりますと、脳卒中後の脱落症状で寝たきり、片麻痺、車椅子生活からの開放が期待され大変有意義と考えられる。
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