研究概要 |
致死的脳虚血に非致死的脳虚血を先行させると、その脳は遅発性神経細胞死から免れる(脳虚血耐性)。これは先行した非致死的脳虚血がストレス蛋白や神経保護的な成長因子を発現するためだと理解されているが、その詳細は不明である。近年、当研究室は、脳の非侵襲的刺激を先行させると、非致死的虚血同様に脳虚血耐性を獲得することを見いだした。すなわち、非虚血性のpreconditioningによる脳虚血耐性獲得の背景を検索することで虚血から「脳を守る」keyを見いだし、さらには脳虚血・脊髄損傷の治療応用へと発展させようとするものである。 平成18年度の本研究の目的は脳虚血・脊髄損傷動物モデルを対象に、脳虚血耐性獲得に最も有効な高頻度磁気刺激のパラメーターと、その背景に発現される遺伝子を検索することにより脳虚血の病態を細胞・分子生物学的手法で解析、発現した遺伝子が損傷神経の修復・再構成に及ぼす影響を実験的に探った。8-9週齢,約65-75gの砂ネズミを使用。神経細胞の活動性亢進のためのconditioningには経頭蓋磁気または電気刺激を用いた。刺激条件;周波数(5,10,25,50,100,500Hz),持続時間(8,16,32,64,128,256秒)及び刺激-虚血間隔の組み合わせ(.25,1,2,4,8,12,24,48,120時間)を変化させ、shamコントロール(I)、5分間虚血群(II)、磁気・電気刺激群(III)、磁気・電気刺激+5分間虚血群(IV)(間隔48時間)の4群(各n=10)を作成。総頚動脈再開通後7日目にそれぞれ各群ごとに組織学的検索、分子生物学的検索、行動・電気生理学的検索を行った。 これらの結果をJ Neurotraumaほかにまとめ公表した。
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