ウィスターラット52匹を用いた。一側の大腿四頭筋を頻度2Hz、持続時間0.2msecの矩形波を用いて電気刺激し、刺激同側の小脳半球表面に設置した電極から誘発電位(spinocerebellar evoked potential:以下SCEPと呼称する)の記録を試みた。また、刺激対側の一次感覚領野から短潜時体性感覚誘発電位(short latency somatosensory evoked potential:以下SSEP)を同時に記録し、同側の後索、同側の下小脳脚破壊によるSCEPおよびSSEPの変化についても検討した。 刺激同側の小脳半球から頂点潜時が11.7±0.3msec(mean±SE)の陰性波(これをN_<11>と呼称することとする)が再現性よく記録できた。N_<11>が安定して得られる至適刺激強度は3mAであった。 刺激対側の頭頂葉から頂点潜時が19.1±0.6msec(mean±SE)のSSEPが再現性よく記録された。 刺激同側の後索破壊後にSSEPは消失したが、N_<11>に変化を認めなかった。刺激同側の下小脳脚を破壊すると、N_<11>は消失もしくは著減したがSSEPには変化を認めなかった。 大腿四頭筋の電気刺激により、同側の小脳半球上に誘発された電位(SCEP)を記録することが可能であった。 後脊髄小脳路は同側の下小脳脚を通り同側小脳半球上に投射し、SSEPは後索を通過して大脳皮質一次感覚領野に至る。刺激同側の後索の破壊によりSSEPは消失したが、SCEPには変化を認めなかったことから、SCEPは後索を上行するSSEPとは異なる電位であることが示された。刺激同側の下小脳脚の破壊によりSCEPが消失もしくは著減したことから、SCEPは刺激同側の下小脳脚を経由して小脳に達したものと考えられた。
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