研究概要 |
ヒトglioma細胞株を使用し,完全ヒト抗ヒトTRAIL受容体モノクローナル抗体による治療効果を検討した.TRAIL受容体のうち,death signalを伝達するDR4及びDR5に対する各モノクローナル抗体(B12-抗DR4,E11とH48-抗DR5抗体)にてヒトglioma細胞株T98G,LNZ308を治療すると,E11及びH48で濃度依存性に細胞死が誘導された.一方,B11は全く治療効果がみられなかった.Soluble TRAIL(sTRAIL)に対する耐性を獲得したT98G.TR及びLNZ308.TRはともにE11,H48に対する感受性が低下していた.E11,H48治療は,sTRAILと同様にこれらの細胞株でcaspaseの切断・活性化が認められ,同時にBidの切断・caspase9の活性化も誘導された.12種類のヒトglioma細胞株に対する感受性を検討すると,E11,H48は過半数の細胞株で効果的に細胞増殖抑制効果が認められ,sTRAILに対する感受性と非常に強い相関性を認めた.一方で,全ての細胞株はB12に耐性を示した.これらの細胞株のwhole cell lysatesを用いてWestern blot法による各種細胞死関連蛋白・腫瘍関連蛋白の発現を定量解析し,E11,H48への感受性との関連を検討した.TRAIL受容体(DR4,DR5を含む)の発現量や各caspases,FADDの発現量は,感受性との相関が認められなかった.しかし,flowcytometryによる細胞膜表面のDR5発現量を解析すると,E11及びH48への感受性と相関関係の傾向が認められ,細胞全体の発現量と膜表面の発現量の間に相違がみられた.現在,nude mouseを用いた担腫瘍マウスモデルにて,本モノクローナル抗体の治療効果を評価する実験を施行中である.
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