研究概要 |
ヒトglioma細胞株を使用し,完全ヒト抗ヒトTRAIL受容体モノクローナル抗体による治療効果を検討した.ヒトglioma細胞では,TRAIL受容体のDR5に対するモノクローナル抗体(E11,H48,KMTR2)のみで殺腫瘍細胞効果が認められた.抗DR5抗体治療によりglioma細胞はTUNEL陽性となり,apoptosisが誘導された.12種類のヒトglioma細胞株に対する抗DR5抗体治療の感受性を,これらの細胞株における各種細胞死関連蛋白・腫瘍関連蛋白の発現量(Western blot解析で定量化)と比較検討したところ,DR5の細胞膜上発現量と弱い相関関係が認められた.更に,細胞内細胞死抑制因子であるAktなどや細胞周期関連蛋白のCyclin D1発現量と有意に相関関係が認められた.ある細胞死抑制因子の発現量を特異的siRNAを用いてdownregulationすると,抗DR5抗体治療の感受性が増強した.また,その因子の発現がほとんど認められず,抗DR5抗体に強感受性を示す細胞株にその蛋白を強制発現すると,抗DR5抗体に抵抗性となることが明らかになった.Nude miceの皮下にヒトglioma細胞を移植した皮下腫瘍モデルでは,抗DR5抗体の腹腔内投与により有意に腫瘍増大が抑制された.また,ヒトglioma細胞をnude miceの脳内に移植した脳腫瘍モデルでは,抗DR5抗体腹腔内投与により有意に生存期間の延長が観察された.以上より,ヒトグリオーマでは,TRAILの細胞死シグナルを伝達する主たる細胞膜受容体はDR5であり,その感受性は,DR5の細胞膜発現と細胞内因子発現が規定因子として抽出された.予後がきわめて不良な悪性gliomaに対する新規治療法としての可能性が示唆された.
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