研究課題/領域番号 |
17591530
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内田 耕一 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (00176687)
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研究分担者 |
河瀬 斌 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40095592)
籾山 俊彦 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教授 (20230055)
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キーワード | neural transplantation / functional effect / mesencephalic neuroepithelial stem cells / synaptic formation / differentiation / slice patch / xenograft / miniature swine |
研究概要 |
(1)新鮮な初期胚神経上皮由来神経幹細胞をドナーとした移植実験では、nestin陽性細胞は移植2週後には残存していたが、移植4週以降はほぼ消失した。またGFAP陽性細胞は移植2週後には存在せず、移植4週後より出現した。Neurochemical marker発現に関する検索では、移植後早期よりglutamateやGABA陽性細胞が出現していた。Tyrosine hydroxylase (TH)陽性細胞は移植2週後では移植片の中央に少数存在するのみであった。移植4、10週後とTH陽性細胞数は増加した。さらにcholine acetyl transferase (ChAT)陽性細胞およびdopamine and adenosine 3',5'-monophosphate-regulated phosphoprotein 32 (DARPP-32)陽性細胞は移植後早期には認められなかったが、移植4〜10週後頃から出現し、移植26週後ではその存在が明らかとなった。以上より、神経上皮型幹細胞はホスト脳内でその多くが神経細胞へと分化し、遺伝的にプログラムされたTH陽性細胞へ分化するのみならず、長期的にはその移植環境に見合ったDARPP-32陽性線条体細胞へも分化する事が明らかとなった。 (2)移植されたドナー細胞が電気生理学的にも機能的な神経細胞へと分化しているか、またシナプス入力を受けているかに関してスライスパッチ法を用いて観察し、機能的神経回路網再構築の可能性について検討した。ドナー由来細胞より数種類の活動電位が記録され、電流固定法ではドナー細胞の膜刺激により連続した活動電位が記録された。電位固定法では大きな振幅のGABAによる抑制性post synaptic currentと小さな振幅のglutamateによる興奮性post synaptic currentが記録された。尚現在、シナプス入力がホスト由来かドナー由来かに関して検討中である。 (3)パーキンソン病モデルラットに対する同種または異種間移植による機能回復機序に関して、移植細胞の分化および成熟度の観点から解析中である。 以上より、移植された初期胚神経上皮由来神経幹細胞がホスト脳内で電気生理学的に機能的な神経細胞へ分化し、更にシナプス結合を受ける可能性が示唆され、損傷神経回路網再建を目的とした移植ドナーとして高い可能性を持つと考えられた。
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