研究概要 |
脳神経外科で扱う疾患は脳浮腫を伴う。脳浮腫は頭蓋内圧を亢進させ、二次的脳虚血や脳ヘルニアを引き起こし、生命にかかわる状態を引き起こす。脳浮腫は血液脳関門やアストロサイトの膜の透過性が亢進し、脳に水分が貯留する病態である。われわれは現在まで浮腫脳のアストロサイトに血管透過性亢進因子であるVascular endothelial growth factor (VEGF)が発現することを示してきた。一方最近になってwater channel proteinであるAquaporinが発現された。Aquaporinは多くのsubtypeがあるが、脳にも存在することがわかり、水の輸送に関係していることが示されている。 われわれは本研究で主に脳浮腫の発現吸収にAquaporinとAstrocyteがどのように関係しているかを検討した。 1.ヒト脳組織を用いた研究(鈴木龍太、鈴木孝夫) 脳外科手術時に浮腫脳を採取し免疫組織学的にAquaporin1,Aquaporin4,VEGF蛋白の発現と発現細胞を検討した。分担研究者鈴木孝夫が開発した改良型蛍光抗体法多重染色を用い、これら蛋白がアストロサイトに強く発現していることが分かった。顕微鏡観察のために3CCDデジタルカラーカメラセットを購入した。 2.臨床的研究(奥田宗央) 脳出血患者の画像(CT,MRI)から脳浮腫を定量的に測定し、脳浮腫の進行、消退を経時的に測定した。脳出血では保存的治療法よりも手術で血腫を摘出したほうが脳浮腫の持続時間が短いことが分かった。 3.実験動物を用いた研究(鈴木龍太、奥田宗央) 研究分担者の奥田がミシガン大学へ行き、ラット脳出血モデルの作成法を習得してきた。正常ラットと高血圧ラットに脳出血を作成し、浮腫発生と消退の相違を見る実験を行っている。 1,2に関して米国で開催された第13回国際脳浮腫シンポジウムで発表し、論文となった。また神経研究にサイトカインと脳浮腫の総論を執筆した。
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