研究概要 |
下垂体腺腫の増殖における血管新生の意義に関しての検討は散見されるものの、そのメカニズムにおいて未だ定見を得られていない。今年度、骨髄から血管内皮前駆細胞を腫瘍局所に呼び寄せるhomingeffectを有するchemokineであるstromal cell-derived factor(SDF)-1に着目し、下垂体腺腫における血管新生の機序に関して、SDF-1の発現と微小血管密度の関係を検討した。 当施設でendoscopic endonasal transsphenoidal surgeryにより摘出された60例(15GH-oma,10PRL-oma,5TSH-oma,6ACTH-oma,24NF-oma)の下垂体腺腫に、抗SDF-1抗体と骨髄前駆細胞に特異的な抗CD34抗体を用いて、蛍光二重免疫染色を行った。SDF-1の発現と微小血管密度の関係をsubtypeや腺腫の浸潤のgradingなどで相関性を統計学的に解析し、さらには培養細胞を用いたELISA法により、低酸素刺激における下垂体腺腫細胞のSDF-1分泌を定量的に解析した。 結果として、下垂体腺腫細胞にもSDF-1が発現しており、従来検討されたVEGFによる組織に既存の血管内皮細胞による血管構築とは別個に、SDF-1のhoming effectによって骨髄から血管内皮前駆細胞を誘導する機序が存在し、下垂体腺腫の血管新生に密接に関わっている事が示唆された。
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