本研究は原因不明の慢性炎症性疾患である関節リウマチの滑膜炎の新規治療法として転写因子NF-κBの抑制分子であるIκBβ2を内因性に制御することにより確立しようとするものであり、平成17年度から平成18年度の2年間で計画されている。本年度は、初年度にあたり、1)NF-κBとIκBファミリーの活性化と発現の検討。2)NF-κB活性化におけるIκBβ2の役割の検討。3)各疾患におけるIκBファミリーの細胞内安定性の検討。4)IκBβ2 mRNAにおけるRNA結合蛋白の同定。についての4項目について検討した。 その結果、滑膜炎の増悪や滑膜細胞増殖に強く関与していることが知られているNF-κBは、健常者および変形性関節症滑膜細胞に比して関節リウマチ滑膜細胞で非刺激下においても活性化されていた。IκBα/IκBβ1/IκBβ2の発現については、ノーザンブロット法とウエスタンブロット法を用いたmRNAおよび蛋白レベルでの検討から、IκBαおよびIκBβ1は発現に差を認めなかったが、IκBβ2は有意に低下していた。また、IκBβ2発現プラスミドを使用した強制発現実験では、ゲルシフト法による蛋白・DNA結合活性において非刺激下およびTNF-α存在下で活性型NF-κBは有意に低下していた。従って、滑膜炎の増悪には、IκBβ2発現コントロール下での活性型NF-κBの存在が重要である可能性が明らかになった。さらに、並行して、IκBβ2の細胞内安定性を検討したところ、関節リウマチ滑膜細胞で有意に低下し、その作用はIκBβ2 mRNA発現量と比例していた。従って、IκBβ2発現低下作用はmRNAレベルで作用していることが明らかになった。現在、IκBβ2 mRNA安定性に関与している因子について検討中であり、同時にIκBβ2 mRNAの3'非翻訳領域の解析を進めている。
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