研究概要 |
17年度は、生体色素の一つであるアクリジンオレンジ、非ステロイド系抗炎症剤の一つで音響感受性物質であると判明しているPiroxicamと4種のニューキノロン系抗菌剤(LFLX, SPFX, CPFX, GFLX).の計6剤を対象にin vitroで検討、比較した。5.25x10^5/0.7ml個の腫瘍細胞浮遊液と上記の6種の薬剤液を混じて、共振周波数2MHz,2.0Wで30秒間照射し腫瘍細胞の生存率を算出した。さらに活性酸素抑制剤であるL-histidineとD-mannitolを添加し、同様に超音波照射を行い腫瘍細胞の生存率を検討した。その結果、SPFXとアクリジンオレンジがPiroxicamと同程度の抗腫瘍効果を有する音響感受性物質であり、超音波照射により一重項酸素を発生させ抗腫瘍効果を発揮し、その効果は濃度依存性であると結論した。 18年度はもっとも有用性が期待されるSPFXを音響感受性物質とした時の抗腫瘍効果をin vivoで検討した。SPFXの濃度を調整し、マウス背部に作成したAir pouch内へSarcoma180細胞1.5 x 10^7個と濃度を調整したSPFXを混じて注入し、周波数2MHz、出力10W/20Wで60秒間超音波を照射した。その結果、経時的に皮膚の色調、腫瘍の増大を観察したところ、皮膚の障害は生じなかったが、腫瘍の増大は薬剤の濃度によらず、いずれでもほぼ同等の腫瘍の増殖が観察された。組織学的にも抗腫瘍効果は見られず、生存率にも有意差は見られなかった。以上からSparfloxacin存在下で超音波照射し抗腫瘍効果を得るには、さらに種々の改良を装置に加えたり、他のより有用な音響感受性物質の開発が必要と判断された。特に生体色素のひとつであるアクリジンオレンジの実験結果はSparfloxacinの抗腫瘍効果を上回る可能性があり、今後の検討が期待される。
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