関節リウマチ(RA)の病像の首座は関節滑膜にあり、関節滑膜は関節破壊の主役を演じていることから、従来よりRAの治療に滑膜切除術が行われてきた。しかし、これは手術侵襲を伴い、全身状態の悪化した患者、麻酔困難の患者にとって大きなリスクとなる。そこで低侵襲な治療法であり、近年癌治療に成果をおさめている光線力学療法(フォトダイナミックセラピー)(PDT)をRA患者の滑膜切除への応用を目指して、基礎実験を行った。 1. RA患者と変形性膝関節症(OA)患者の手術時に採取し、樹立した培養滑膜細胞に、培養開始から7日前後に光感受性物質であるATX-S10(Na)、タラポルフィンナトリウムを添加したところ、RA培養滑膜細胞はOA滑膜細胞よりもATX-S10(Na)、タラポルフィンナトリウムの細胞内へのとりこみが有意に多かった。 2. RA培養滑膜細胞でのATX-S10(Na)、タラポルフィンナトリウムの細胞内取り込みの多い器官はライソゾームであった。 3.RA培養滑膜細胞においてATX-S10(Na)、タラポルフィンナトリウム使用で共にPDT効果が見られた。PDT条件を変えてみたところ、細胞死は主にネクローシスによることが確認された。 4.手術時に採取した滑膜組織をSCIDマウスに移植し、生着した後にPDTを行ったところ、ATX-S10(Na)、タラポルフィンナトリウム使用で共に滑膜細胞の細胞死を誘導でき、PDT効果を確認した。 5. ラットコラーゲン関節炎モデルにおいて関節炎発症部位へPDTを行い、関節炎の抑制効果を骨破壊の程度をstage分類してx線評価したところ、タラポルフィンナトリウム投与例で関節破壊の抑制効果が見られた。 本研究の結果よりPDTをRA患者へ応用にむけた基礎データが得られ、RAのより低侵襲的滑膜切除の実現が可能となることが期待された。
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