研究概要 |
サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)のなかのCip/Kipファミリー(p21、p27、p57)は、神経軸索伸展に阻害的に働くRho/Rho-kinase経路の活性をそれぞれ抑制することが報告されているが、CDKIの他のファミリーであるINK4ファミリー(p15,p16,p18,p19)については細胞周期関連以外の機能を解明した報告はない。そこでINK4ファミリーが、Cip/Kipファミリーと同様に神経軸索伸展作用を有し、末梢神経損傷後の機能回復に貢献しうるかどうかを解明するために研究を開始した。昨年度に引き続き、INK4ファミリー遺伝子のクローニングを行い、N端、およびC端にtagを結合させたベクターの作製を行い、その細胞内局在の検討を行った。コントロール及び候補遺伝子を含むアデノウイルスを作製し、初代培養後根神経節細胞に感染させ、軸索伸展作用、神経突起数、神経突起の枝分かれの数について観察を行ったが、優位な差は得られなかった。また初代培養小脳顆粒細胞を用いて、同様の実験を行ったがこちらについても優位な差は得られなかった。またp21、p27がそれぞれスレオニン残基、セリン残基がリン酸化を受けることによってその局在を核内から細胞質へと変化させることから、INK4ファミリー遺伝子でも同様にスレオニン残基、セリン残基に対する変異体を作製し、その局在や機能に変化をもたらすかどうかについて昨年度に引き続いて検討を行った。
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