研究概要 |
昨年度は,作製した神経幹細胞-磁気ビーズ複合体は神経系の未分化な細胞特性を保ち,非複合体群と同等の生存率と各種神経系細胞への分化能を保持しながら,外磁場への誘導能を獲得していることをin vitroで示した.(NeuroReport 2005,Characterization of labeled neural progenitor cells for magnetic targeting) 本年度はこの神経幹細胞-磁気ビーズ複合体を用い,Oishiらの開発した脊髄への軸索伸長を定量的に評価できる脳・脊髄器官共存培養法を用いて,複合体の軸索伸長に与える影響を検討した.この共存培養組織に複合体と非複合体を移植したところ,外磁場を作用させない環境下ではどちらの細胞も組織近傍に散在し,組織内で伸長した軸索数はほぼ同等で有意差を認めず,磁気ビーズでラベリングすることによる影響が軸索伸長能力においても存在しなかった.それに対し,外磁場を作用させることにより複合体を組織周辺に集積させると軸索伸長は有意に(約1.5倍)促進されていた. つまり供給に限界のある神経幹細胞を脊髄損傷部に集積させることで,より高い軸索伸長効果が得られ,効率的な脊髄再生能を発揮させる可能性が示唆された. 今後in vivoで脊髄損傷モデルを用いる必要があるが,磁気ターゲティング法は脊髄損傷部へ細胞を誘導・集積させ,その効果を増幅させる有効な細胞移植方法の一つとなりうるものと期待される. (これらの結果は英語論文としてまとめ,現在投稿中である.)
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