研究概要 |
我々はこれまでの研究で、ラット腰椎椎体由来の骨芽細胞前駆細胞の一部にはプロゲステロン・レセプターを持ち、プロゲステロンによりin vitroで骨を形成する能力を持つ骨芽細胞前駆細胞群が存在することを報告した(Ishida and Heersche, 1999)。また、プロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は6週齢時(性成熟前)では、オス・メスの両性に存在し、腰椎由来細胞1,000細胞中、1.5細胞(オス)、1.8細胞(メス)を認めるが、性成熟後の24週齢では、腰椎由来細胞1,000細胞中、0細胞(オス)、1.1細胞(メス)とオスの細胞では消失することを報告した。この性成熟後の腰椎由来細胞において、エストロゲン(17β-estradiol)を作用させるとプロゲステロン・レセプターを骨芽細胞前駆細胞に誘導でき、腰椎由来細胞1,000細胞中、0.6細胞(オス)、1.5細胞(メス)にプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞が認められることを明らかにした。17年度の研究では、我々は人工関節置換術を施行時、または外傷をきたした患者から採取した骨・骨髄組織よりヒト骨芽細胞前駆細胞を分離・培養し、ヒトでもラット同様にグルココルチコイド・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞およびプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞が存在するかの検討を行った。これまでの検討では、グルココルチコイド・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は1,000ヒト骨由来細胞中0.4細胞、プロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は1,000ヒト骨由来細胞中0.08細胞存在することが認められた。現在、これらのグルココルチコイド・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞およびプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞の加齢と骨芽細胞の増殖能・分化能(骨形成能)・自己複製能(self-renewal)の関係について検討を行っている。
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