研究概要 |
我々は人工関節置換術を施行時、または外傷をきたした患者から採取した骨・骨髄組織よりヒト骨芽細胞前駆細胞を分離・培養し、ヒトでもラット同様にグルココルチコイド・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞およびプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞が存在するかの検討を行った。これまでの検討では、グルココルチコイド・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は1,000ヒト骨由来細胞中0.4細胞、プロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は1,000ヒト骨由来細胞中0.08細胞存在することが認められた。 このヒト骨芽細胞前駆細胞において、エストロゲン(17β-estradiol)を作用させるとプロゲステロン・レセプターが骨芽細胞前駆細胞に誘導でき、ヒト骨芽細胞前駆細胞1,000細胞中、0.4細胞にプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞が認められるようになった。さらにこの誘導されたプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞はプロゲステロンにより、in vitroで骨形成を行う能力を保持していることが確認された。これらのことより、高齢群においてもエストロゲンでプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞を誘導し、プロゲステロンで骨形成を促進出来る可能性がラットでは示唆された。この知見は、ヒトにおいて骨粗鬆症に対する薬物治療法の1つであるホルモン補充療法において、プロゲステロンとエストロゲンの用量および投与方法を確立することで、より効率的な治療を期待できることが示唆された。
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