研究概要 |
関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)の臨床上一番の問題点は、関節炎・関節破壊のため日常生活に支障をきたすことである。そこで関節炎・関節破壊のメカニズムを解明することは炎症性関節疾患の治療戦略にとって意義深い。これまでの我々の研究から、関節液中のトロンビンと肥満細胞が産生するトリプターゼが関節炎・関節破壊のKey enzymeであると考えている。すなわち、トロンビンと肥満細胞トリプターゼ(MCT)は直接関節軟骨を破壊するのではなく、滑膜に存在する特有のレセプターPARs(protease activated receptor 1~4)を活性化させて、シグナル伝達を起こし、関節炎・関節破壊に繋がるトリガー酵素であると考える。そこで、特有のレセプターPARsを介したシグナル伝達から発現に至る機序を解明し、トロンビンとMCTが関節炎・関節破壊の比較的初期の段階において中心的な役割を果たしているという仮説のもとに実験を進めており、以下の結果が得られている。 1.RA、OAと正常の関節液、滑膜の合成基質を用いトロンビン、MCT活性を測定した結果、RA関節液中では両者の活性が高く、滑膜中ではRAとOAでMCT活性が正常に比べ有意に高かった。 2.Real time RT-PCRを用いて、RAとOA関節液と滑膜においてPAR-1-3のmRNAの発現を認め、RAの発現量が有意に高かった。 3.培養滑膜線維芽様細胞への添加実験:トロンビン、MCTは濃度依存性に増殖能を認め、トロンビン、MCTは濃度依存性に、PAR-2 agonistは高濃度になるとIL-8の産生増加を認めた。 関節炎が起こっている局所において、トロンビン、MCTが産生活性化され,滑膜細胞の増殖促進し、PAR-1,2,3を介してIL-8の産生を亢進させ、関節炎・関節破壊に繋がるといった一連のカスケードがあることが示唆された。
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