研究概要 |
関節軟骨における基質の分解と合成の制御機構を解明することにより、最終的に変形性関節症の治療法を確立することを目的とした。その中でも、骨軟骨組織に豊富に含まれ、オートクライン/パラクライン的に作用する内在性のインシュリン様成長因子(IGF-I)の効果について下記の研究をおこなった。 CAMBREX社より購入した正常ヒト関節軟骨細胞を培養し,confluentになった時点で無血清下に軟骨基質の合成促進因子であるIGF-I, bTGF-β1,また軟骨基質の分解因子であるIL-6,IL-1,デキサメサゾンを単独またはIGF-Iと同時に投与した。その後、総RNAを抽出し、RT-PCRおよび定量PCRをおこない、軟骨基質成分や、各種基質分解酵素(MMP)の発現について比較した。また上記薬剤のIGF-I, IGFレセプター(IGF-R)、IGF-結合蛋白(IGFBP)に及ぼす影響についても調べた。 IGF-Iは軟骨基質成分であるaggrecanの発現を増加させた。またIL-1やデキサメサゾンはaggrecanの発現を減少させるが、IGF-Iを同時投与することによりその低下の程度は軽度抑制された。IGF-IはMMP-3,-9,13の発現にはほとんど影響をおよぼさなかった。またIL-1はIGF-Iの発現を増加させIGF-Rを減少させた。デキサメサゾンはIGF-Iの発現を抑制したがIGF-Rは増加した。TGF-β1はどちらも増加させた。またIGFBP-1〜6の発現も各因子により異なる発現がみられた。 以上より、IGF-Iは軟骨基質の合成を促進することにより軟骨修復に作用し、また軟骨の分解に保護的に作用していることが推測された。今後は実際の病的な状態でIGF-axisがどのようになっているのか解明するのが課題である。
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