<実験1:ポリマーから徐放されたbFGFの生物学的活性と至適濃度に関する検討> 【目的】本実験の目的は以下の2項目、(1)人工神経から徐放されたbFGFが、ゼラチンから徐放されたbFGFと同様に生物学的活性を保っているかどうか、(2)bFGFを徐放するにあたってのbFGFの至適濃度、について検討を加えることである。すなわち、まず人工神経から徐放されるbFGFがその主作用である血管新生を示しているかどうかについて検討を加えた。また、bFGFは徐放されることによって低濃度であっても十分に効果を示すことが期待されるので低濃度のbFGFと従来使用されている100μg/mlの濃度の血管新生について比較検討を加えた。 【方法】PLAとPCLの共重合体スポンジをPLAのメッシュで補強したもので、管腔壁は0.5mmで内腔径は2mm外径3mm長さ6mmとした。この人工神経を100および10μg/mlのbFGF溶液と生理食塩水に約1時間浸潤させた。 以上の処理後に、Wistar系ラットの背部皮下に、十分な間隔をおいて前述の3群に分けて包埋した。(各群n=8)包埋後4週目にチューブを採取し10%ホルマリン液にて固定後にパラフィン包埋し、チューブ中央においてチューブ1本につき横断切片を各3枚ずつ作成しHE染色を行った。各横断切片について、組織学的にチューブ管腔内の単位面積あたりの新生血管数・総血管面積・平均血管面積・管腔内血管占有率の4項目において比較検討を加えた。 【結果】10μg/mlbFGF溶液群と生理食塩水群では4項目において優位差を認めなかった。しかし、100μg/mlbFGF溶液群と生理食塩水群では4項目のいずれにおいても優位差を認めた。すなわち、bFGFは徐放効果を持っていたとしても少なくとも100μg/mlbFGFの濃度は必要と考えられた。
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