超高磁場MRI装置では頚髄の撮影例がほとんどなく、被検者の体型、呼吸によるわずかな体動、気管内の空気等が画像にどの程度の影響を及ぼすのかが不明であった。そのため、まず、コントロール画像として健常例4例に対して3T MRI撮影を行った。頚椎が太く、両肩が下位頚椎にかかるような被検者では、下位頚椎の良好な画像は得られにくいことがわかった。 つぎに、頚部脊髄症患者中、1.5TのMRI装置で検査を行い、圧迫による頚髄の輝度変化(脊髄変性)が確認できた5例に対して3Tの超高磁場MRI装置にて同様に頚椎の撮影を行った。1.5T MRIと3T MRIの画像を比較すると、画像の解像度は1.5Tによるもののほうが鮮明であり、脊髄変性部と正常部の境界も明瞭であったが、変性部位の白質、灰白質中の空間的な広がりは3Tによるもののほうが良好に捉えることができた。脊髄輝度変化の範囲と臨床症状や神経学的評価との相関は1.5T、3TのMRI画像いずれからも得られなかった。本症例の手術後6ヶ月の時点にも同様に3T MRIを撮影し、術前のMRI所見と比較検討する予定である。また、本症例に対して、超高磁場MRI装置での拡散MRIの撮影も試みている。この方法での画像に対しても術前と術後6ヶ月の時点で臨床症状や神経学的評価と照らし合わせながら比較検討する予定である。 今後は症例数を増やし、画像解析ソフトを使用による評価を行い、統計学的に解析していく予定である。
|