研究概要 |
頚椎症性脊髄症(12例)と頚椎後縦靭帯骨化症(9例)による頚髄症に対して手術予定の患者21例の頚椎を第3テスラー超磁場MRIにて撮像した.21例中15例(男性9例,女性6例;年齢45-66歳,平均56.1歳)に髄内輝度変化(脊髄軟化部)を認め,これらを術後(棘突起縦割椎弓形成術)3ヵ月の時点で再撮し,脊柱管拡大,脊髄拡大,髄内輝度変化について術前と比較検討した.脊柱管拡大は,術前に髄内輝度変化を認めた高位の脊柱管断面積を計測し,術前後の変化率で評価した.脊髄拡大も,同高位の脊髄断面積を計測し,術前後の変化率で評価した.髄内輝度変化は,輝度変化を生じている部分の体積を測定し,同高位の脊髄体積に占める輝度変化部の体積を脊髄軟化部占有率として術前後の変化を求めた.また,脊髄軟化部の輝度と正常脊髄の輝度の比率を脊髄軟化部輝度比として術前後で比較した.面積,体積,輝度の測定はコンピューターソフトsliceOmatic(image labo)を使用した.上記の術前後脊柱管拡大率,脊髄拡大率,脊髄軟化部占有率変化,脊髄軟化部輝度比変化に日本整形外科学会頚髄症治療成績評価基準であるJOA scoreによる平林らの改善率を加えた5項目を相互に比較し,Pearsonの相関係数を求めた. JOA score改善率と術前後脊柱管拡大率との相関係数は-0.24,脊髄拡大率との相関係数は-0.15,脊髄軟化部占有率変化との相関係数は0.42,脊髄軟化部輝度比変化との相関係数は-0.42であり,いずれも相関は認められなかった.すなわち臨床所見と術前後の脊柱管,脊髄,髄内輝度変化との間に優位な関連は見出せなかった.また,脊柱管拡大率と脊髄拡大率の相関係数は0.70,脊髄軟化部輝度比変化との相関係数は0.56であり,相互の相関を認めた.その他の項目間での相関は認めなかった.
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