研究課題
基盤研究(C)
【目的】肝細胞増殖因子(HGF)は癌の増殖・浸潤・血管新生を促す。また骨芽細胞はHGFを産生するが、骨転移とHGFの関連は明らかではない。そこで我々はマウス乳癌細胞株、BALB/c-MC(BALB)を用いて骨転移へのHGF関与を検討した。【方法および成績】癌細胞のマウスにおける骨転移組織(左心室腔への癌細胞投与による転移系)を評価すると腫瘍周囲基質にHGF発現がみられ、その部位に一致して血管新生の指標となるCD31陽性血管が認められた。詳細を検討するためにBALB、骨髄細胞および骨芽細胞の培養上清中のHGF濃度を測定するとBALB、および骨髄細胞では感度(0.4ng/ml)以下であったが、骨芽細胞では3.13±0.25ng/mlであり、この濃度は既報より血管新生を促進しうる濃度であった。以前の検討ではBALBを骨髄細胞と共存培養したとき、培養上清中のPGE_2濃度が上昇したので、培養系にPGE_2を添加すると骨芽細胞からのHGF産生は増加した。それに対してBALBおよび骨髄細胞においては依然として測定感度以下であった。5ng/mlのHGFを添加するとBALBの増殖は亢進し、HGF受容体であるc-MetのBALBにおける発現もWestern blotで確認された。浸潤能を評価するためBALBを基底膜モデルであるマトリゲルコートインサート上に播種し、下層にHGFを添加してインサート通過数を計測するとHGF添加はBALBの通過を3倍に増加させた。また下層に骨芽細胞を培養すると、BALBの通過は増加し、その効果はHGF阻害剤NK4で抑制され、さらにc-Met中和抗体添加でも抑制された。【結論】骨芽細胞の産生するHGFはマウス乳癌細胞株、BALBの骨・骨髄への浸潤を促進し、さらに増殖を刺激すると考えられた。またHGFは転移巣での血管新生を誘導し癌の増殖・進展を促進すると考えられた。
すべて 2006
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Bone 39(1)
ページ: 27-34
Bone 39