椎間板を構成する線維輪細胞と髄核細胞は形態的に異なるが、それらを明確に区別できるようなマーカー分子の報告はまだない。そこでラット椎間板を用いてマイクロアレイをおこない、CD24が髄核細胞において特異的に発現していることを見出した。そこで、ラットの各組織におけるCD24の発現量の比較と週齢別での発現量の推移をreal-time PCRで解析した。また、免疫染色・フローサイトメトリーを用いて髄核におけるCD24の発現と胎生期における脊索から髄核にかけての発現を経時的に検討した。さらにラット椎間板ヘルニアモデルの椎間板組織、および6症例の脊索腫と7症例の軟骨肉腫のヒトサンプルを用いて、免疫染色によりCD24の局在を検討した。またその結果、CD24はmRNAレベルでラット髄核に特異的に発現しており、免疫染色ではラット椎間板の脊索と髄核に局在を認め、その発現量は加齢により変動しなかった。椎間板ヘルニアモデルにおいてもCD24の発現は維持されており、脊索腫では6症例中5症例にCD24陽性であったが、軟骨肉腫ではすべて陰性であった。髄核におけるCD24の発現は種を超えて特異的に高く、マウスやラットではその発現は胎生期から発現しており、加齢においてもその発現が維持されていた。CD24は椎間板ヘルニアや脊索腫においてもその発現が確認され、特に脊索腫での発現は本分子が脊索細胞に特異的であることを示唆しているものと思われた。したがってCD24は脊索細胞の特異的表面マーカーの可能性があり、脊索腫の確定診断のみならず、再生医療分野における髄核細胞の分化誘導判定などの際に有用な指標となりえると思われた。さらに、硬膜外に暴露された椎間板ヘルニアの自然吸収といった炎症性病態下におけるCD24の機能的役割については今後の検討を要する。
|