ヒト骨髄より単核細胞を分離し、メチルセルロース中でGM-CSF存在下で培養して得られる細胞(主にCFU-GM)を回収し、破骨細胞前駆細胞とし、レンチウィルスベクターを用いてhuman papilloma virus E6/E7を導入した。ピューロマイシン存在下で16個のコロニーをピックアップし、不死化細胞として得た。これらのコロニーについてsoluble RANKLおよびM-CSF存在下で破骨細胞分化能を有するか検討したところ、破骨細胞へは分化しないことが判明した。これら16種の不死化細胞のうち、いくつかはストローマ細胞様であったため、そのCharacterizationを開始した。ストローマ細胞としての表面抗原(Stro-1を使用)が陽性であることを確認した(免疫染色)。また、骨芽細胞誘導培地にて培養をおこなったところ、アルカリフォスファターゼ、アリザリンレッド、von Kossa染色が陽性の骨芽細胞様細胞であることが判明した。また、脂肪細胞への分化能を有することも判明した。従って、当初の目的(破骨細胞前駆細胞の不死化)とはずれるが、骨芽細胞や脂肪細胞に分化するストローマ細胞の細胞株が得られたことになる。現在これらの細胞株の破骨細胞形成支持能等につき、検討を始めている。次に、上記のごとくヒト骨髄細胞から培養分離して用いた細胞にはストローマ細胞が混入しているため、血球系細胞ひいては破骨細胞前駆細胞の比率を上げるため、ヒト末梢血単核細胞より(磁気ビーズを用いて)分離したCD14陽性細胞を不死化のターゲットとして用いる実験も開始した。また、不死化遺伝子であるE6/E7の発現のタイミングが破骨細胞分化にたいして影響するかを調べるため、inducibleな(Tet on/offシステムを改良したもの)レンチウィルスベクターを用いて検討を開始した。まだpreliminaryな結果であるが、ヒト末梢血CD14陽性細胞は不死化のターゲットとして優れており、かつE6/E7の発現の制御が破骨細胞分化に必要であると考えている。現時点ではまだ発表を行っていないが、さらなる検討を加えて学会発表、論文投稿する予定である。
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