ヒト骨髄より単核細胞を分離し、メチルセルロース中でGM-CSF存在下で培養して得られる細胞(主にCFU-GM)を回収し、破骨細胞前駆細胞とし、レンチウィルスベクターを用いてhuman papilloma virus E6/E7を導入した。HPV E6/E7のE6によりP53を、E7によりRBを不活性化する。癌抑制遺伝子として知られるP53とRBを不活性化することにより、細胞を不死化する。結果として、不死化細胞のごとく増殖する細胞は得られたが、soluble RANKLおよびM-CSF存在下で破骨細胞分化能を有するか検討したところ、破骨細胞へは分化しないことが判明した。 その原因として、これら不死化細胞様細胞のうちのいくつかは、ストローマ細胞(免疫染色にてStro-1陽性)であることが判明した。したがって、ヒト骨髄細胞から培養分離して用いた細胞にはストローマ細胞が混入しており不死化のターゲットとしては適当ではないと判断し、血球系細胞ひいては破骨細胞前駆細胞の比率を上げるため、ヒト末梢血単核細胞より(磁気ビーズを用いて)分離したCD14陽性細胞を不死化のターゲットとして用いる実験を施行中である。 また、もうひとつの原因として、不死化遺伝子であるE6/E7の発現が持続していると、分化に必要な細胞周期の停止がおこらないため不死化ができない、という可能性である。そこで、現在はinducibleな(Tet on/offシステムを改良したもの)レンチウィルスベクターを用いて検討をおこなっている。細胞を増やす段階で不死化遺伝子をonにすることにより、永続的な増殖を得る。そして次に破骨細胞へ分化させる際には、不死化遺伝子をoffとすることにより、細胞周期が停止し分化が始まる、というシステムである。 破骨細胞前駆細胞の不死化細胞株を樹立するという当初の目標には現時点では到達していないが、上記の検討を加え、若手研究者も交えて目標達成のため研究を続行している。
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