研究概要 |
1.研究の目的で、Ewing/PNE7腫瘍が神経系への分化傾向を示し、レセプターと神経栄養因子の両方を発現しautocrine loopを形成している可能性が高い、ことを指摘した。 2.8症例(骨外腫瘍:5例および骨腫瘍:3例)に対し、神経栄養因子に対するレセプター(trkA, trkB, trkC)および神経栄養因子(NGF, BDNF, NT-3)に対する特異抗体を使用して免疫組繊化学染色を行った結果、当初の仮説通り症例により染色性に差が認められた。trkAおよびtrkBは、8症例中7例で陽性像を示したが、骨原発例ではtrkAの染色性が弱い傾向にあった。各抗体に対する陽性率は、trkC(5/8)、NGF(5/8),BDNF(3/8),NT-3(1/8)であり、個々の症例に着目すると、trkA, trkB, trkCおよびNGFの4種を発現する症例が4例あり、6種の抗体中4種で陰性を示す症例が3例あった。この結果は、症例により染色性にパターンが存在する可能性を示唆し、また、trkAとNGFの共発現は、autocrine loopの形成を強く示唆していた。総合的な解析は次年度の課題となるが、本検討で2つの問題点が明らかとなった。骨原発例では、混在する骨に対する脱灰操作が染色性に影響している可能性があること、抗体の種類により核が陽性となる領域があり本来の局在と矛盾すること、である。染色に用いた病理組織は、当院における最初の生検組織を使用したが、非脱灰の組織や転移巣を使用した検討が必要と考えられる。 3.融合遺伝子の検索に関しては、定法に従い腫瘍組織からのRNAの抽出と精製、RT-PCR、塩基配列の検索を行いデータを整理・蓄積しつつある。他施設からの症例の提供/収集については、体細胞遺伝子の解析(融合遺伝子の検索など)や臨床情報の利用等について、学内倫理審査委員会に提出する書類を準備中である。
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