研究概要 |
1.融合遺伝子の検索:16症例の凍結腫瘍組織からRNAを抽出し、融合遺伝子の検索を行った。Ewing/PNET腫瘍で最も頻度の高い融合遺伝子EWS-FLI-1が16例中12例で検出され、EWS-ERGが1例で検出された。しかし、3例で既知の融合遺伝子が検出されず、今後の詳細な検討が必要である。 2免疫組織化学染色:Ewing/PNET腫瘍組織を用いた前年度の研究で、神経栄養因子(NGF, BDNF, NT-3)及び対応するレセプター(trkA, trkB, trkC)の中で、特にtrkAとNGFが共発現し、autocrine loopを形成している可能性が強く示唆された。現在、症例数を追加するため、他施設倫理委員会への提出書類を準備中である。 3.マイクロアレイによる遺伝子発現解析:以下の理由によりマイクロアレイを用いた検討を実施した。(1)免疫組織化学的な検討で脱灰操作が染色性に悪影響を及ぼしている可能性が示唆されたことから、各因子の発現を他の方法で検討する必要性が生じた、(2)研究計画書に記載した遺伝子の発現量の検索がマイクロアレイで行えることがわかった、(3)マイクロアレイを用いることにより、すべての遺伝子の発現解析が可能である、ことを理由とする。 骨原発腫瘍6例、軟部原発腫瘍9例(合計15症例)を用いて、マイクロアレイによる遺伝子発現研究を実施した。クラスター解析の結果、2つのグループに分かれることが明らかになったが、原発部位の違い(骨および軟部)は、この2つの区分け関わっていなかった。また、現在我々が把握している臨床・病理学的なデータとの相関も低い可能性が示唆されている。今後更なる情報の収集とそれら情報の再分類を考慮する必要がある。発現遺伝子の詳細な解析および多変量解析を実施する予定である。
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