研究概要 |
我々は、Ewing's/PNET腫瘍(骨原発3例、骨外原発5例)を用いて、神経栄養因子に対するレセプター(trkA, trkB, trkC)および神経栄養因子(NGF, BPNF, NT-3)の発現をRT-PCR法で検討し、個々の腫瘍が各因子を様々な程度に発現していることを明らかにした。次いで、特異抗体を用いた免疫組織化学的染色で、腫瘍細胞がこれら因子を発現していることを確認した。免疫染色では、trkA, trkBが7/8例で陽性となり、NGFは(5/8)で陽性となった。trkAとNGFを共発現する5例では、autocrine loopを形成していることが強く示唆された。上記二つの実験結果には、ある程度の相関が認められたが、必ずしも一致しなかった。特に、原発部位(骨および骨外)の違いによるRT-PCR法と免疫染色の相違は大きく、部位の違いが各因子の発現に影響を及ぼしている可能性があると考えられた。そこで、発現量の差を明らかにするために、リアルタイムPCR法を用いた解析を試みたが、結果が不安定であったため、マイクロアレイ法を用いて解析することにした。骨原発5例、骨外原発6例を用いたクラスター解析の結果、2つのグループに分かれることが明らかになったが、原発部位の違いは、この2つの区分に関わっていなかった。また現在、我々が把握している臨床・病理学的なデータとの相関も認められなかった。神経栄養因子に対するレセプターおよび神経栄養因子の発現は全体的に低かったが、レセプターを比較的強く発現する症例では、神経栄養因子の発現は低く、神経栄養因子を強く発現する症例は、レセプターの発現が低い傾向にあった。その他の遺伝子に関しては、IGF1-R、ID2、CD99の有意な上昇とTGFB-R2の発現抑制が認められた。RT-PCRとマイクロアレイの結果は概ね相関したが、免疫染色との乖離は大きかった。更なる検討のためには、遺伝子の発現解析に使用できるサンプルが必要であると考えられた。
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