研究概要 |
近年,血管内皮における酸化低比重リポ蛋白(ox-LDL)の特異的受容体として同定されたLOX-1(レクチン様酸化LDL受容体1)が軟骨細胞にも発現していることが示され,軟骨変性との関連が示唆されている.そこで本研究では高脂血症負荷が軟骨変性を促進するかどうかをin-vivoにおいて検討することとし,遺伝性高脂血症ウサギ(KHC)とコントロールとして日本白色ウサギ(JW)を用いて膝前十字靭帯と内側半月を切除して実験的変形性膝関節症を作成し,軟骨変性を組織学的に評価し,また免疫染色法によりox-LDLの局在とLOX-1の発現を検討した.その結果,KHCではSham手術側においても軟骨変性の進行を認めた.また手術側においてJWでは軟骨の表層・移行層の繊維化や細胞数増多が特徴的に認められたのに対し,KHCでは軟骨の菲薄化・細胞数減少が顕著であった.免疫染色ではKHC軟骨のSham側と両群の手術側にox-LDL,LOX-1の局在がみられた.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は軟骨細胞の重要な成長因子であるが,免疫染色でbFGF陽性細胞率を検討したところKHCでは手術側,Sham側ともに有意に低下していた.また,JWより採取した培養軟骨細胞で検討したところ酸化LDLは経量的・経時的にbFGFmRNA発現を抑制した.本研究により高脂血症負荷は実験的変形性関節症を促進させることが示され,その増悪にはox-LDLの蓄積とLOX-1の発現,およびそれらによるbFGF発現抑制も関与している可能性が示された.本研究は近年世界的に肥満との関係などが注目されている関節症を,生活習慣病の一つである高脂血症負荷という観点からin-vivoにおいて捉えた報告ということができる.
|