研究概要 |
1.平成17年度に人工股関節置換術後2年経過した患者100症例を対象としてF-Scanを用いた歩行分析とともに、正座、屈んで温泉に浸る格好など日本人に固有の動作をビデオ撮影し股関節の動きを立体的に解析している。また術後のレ線やCTにより臼蓋・大腿骨コンポーネントの設置角度を測定し、フェモラルオフセット、股関節中心位置(Hip center)を計測している。特に術後のTrendelenburg徴候と密接な関係にある%FOについて検討を加えている。%FOはフェモラルオフセットを股関節中心位置間距離で割った値であり、この値が20%以上であると正常な股関節外転筋機能を示すTrendelenburg徴候陰性の比率が有意に増加する((J.Arthroplasty,17:747-751,2002))。このことに関して纏めた新たな知見が論文として掲載された(Hip Joint,31:509-511,2005)。さらに人工股関節置換術における歩行中の骨盤の動きと股関節外転筋力および人工股関節設置位置との関連を調べ、得られた知見を第36回日本人工関節学会で発表している。 2.術中での人工股関節インプラント設置での重要な問題点は、手術操作中の骨盤の動きによる設置角度の誤差の発生である。そこで独自の骨盤の動きを術中のリアルタイムで監視する器械を開発し、手術中での後外側進入法とTranslateral approachでの骨盤の動きをそれぞれ測定し、検討を加えている(J.Orthopaedic Science,10:167-172,2005)。これらの知見を元に平成17年4月から平成18年2月までに、従来の2次元的人工股関節設置計画により後外側進入法とTranslateral approachの2群に分け122例の人工股関節置換術行った。これらの症例の手術成績を日本整形外科学会股関節機能判定基準とHarris Hip Scoreを用いて採点し、脱臼の頻度や不安定感を起こす動作などについて調査を開始している。その一部を既に第36回日本人工関節学会で発表している。 3.透視下に最大の屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋の動態撮影(シネラジオグラフィー)を行い、現在使用されている人工股関節の体内での可動域の限界を調べ、様々な機種での大腿骨コンポーネントの頚部と臼蓋コンポーネントとの間での亜脱臼を起こし始める角度を推定した。また、人工股関節術後反復性に脱臼する症例を検討している(Hip Joint,31:580-581,2005)。これらの知見に基づき脱臼を防ぐためのライナーの開発に着手しており、平成18年度には学会で公表する予定である。 4.最近普及し始めた最小侵襲人工関節置換術(Minimally invasive total hip arthroplasy)についても検討を開始している。日本人は欧米人に比べ体格が小さく、肥満も少ない。そこで、この方法による手術は、日本人に適した人工股関節置換術に適しているのではないかと考え、臨床的な基礎的データの収集を開始している。
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