研究概要 |
1.心臓-迷走神経反射に及ぼす性差/性周期と女性ホルモンの影響に関する研究 性周期が一定で基礎体温が2相性を示す健康成人女性14人を対象に、Neck-Chamber法を用いて卵胞初期、排卵前期、黄体中期に心臓-迷走神経反射の感受性を調べ、同年代の男性と比較したところ、卵胞初期と黄体中期における感受性は男性より有意に低く、一方、排卵直前における感受性は男性と同等の値を示し、血中エストラダイオール濃度と心臓-迷走神経反射の感受性の関係は正の相関を示した。 2.全身麻酔中及び覚醒後における心臓-迷走神経反射に及ぼす性差の研究 次に、性周期が一定で基礎体温が2相性を示す健康成人女性15人を、性周期に関わらず無作為に抽出し、Neck-Chamber法を用いた心臓-迷走神経反射の感受性と心拍変動を、覚醒時及びセボフルレン麻酔中に測定し、同年代の男性と比較したところ、心臓-迷走神経反射の感受性、心拍変動の高周波領域やSDNN, pNN50, RMSSDはいずれも覚醒時及びセボフルレン麻酔中男性の方が女性よりも有意に高いことが分かった。 3.α2-agonistが全身麻酔中および覚醒後の心臓迷走神経反射の回復に及ぼす影響に関する研究 健康成人男性12人を対象に、Neck-Chamber法を使い、セボフルレンを用いた全身麻酔前後における、dex-medetomidine 25μg/kgの静脈内投与が、心臓-迷走神経反射に及ぼす影響について検討したところ、dex-medetomidineは麻酔前の心臓-迷走神経反射の感受性を有意に上昇させたが、全身麻酔後は両群間で有意差は認められなかったことから、セボフルレンによる迷走神経抑制作用の方がdex-medetomidineによる迷走神経亢進作用よりも強いことが分かった。 4.周術期における迷走神経反射と心臓合併症発現頻度の関連に関る研究では、対象となる患者数が不十分で、心臓-迷走神経反射の感受性、術後の重篤な心臓合併症の発生頻度に性差は認められず、反射感受性と合併症の発生頻度に相関は見られなかった。
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