遺伝子治療の発展は目覚ましいが、痛みに対する遺伝子治療を目的とした基礎的研究報告は非常に少ないため本研究を計画した。 遺伝子治療のstrategyとして、内因性疼痛抑制物質を脊髄腔内に過剰発現させることや疼痛物質の発現を抑制させる、というものがある。前者の方法に関して、より簡便に全身的(経静脈的、皮下組織への投与)に投与した研究報告はない。 内因性疼痛抑制物質preproenkephalinを用いた研究では、神経との親和性が認められている単純ヘルペスウイルスを用いた基礎研究が一編のみRockefeller UniversityのKaplittらによって報告されている。(Proc Natl Acad Sci USA. 1994)。 本研究は、臨床応用が可能となるように比較的簡便な方法(脊髄腔内ではなく皮下や静脈注射など)で、安全な治療遺伝子導入の確立を目的とした。本研究は、疼痛を抑制することが期待できる他の多くの物質についても同様の手法を用いて展開できると期待され、研究を進めている。 副腎髄質クロマフィン細胞から内因性疼痛抑制物質enkephalinの遺伝子情報を抽出。また、内因性疼痛抑制物質preproenkephalinのcDNAを作製。 マウスの鎮静・鎮痛状態を観察する実験系を発案・作成し、疼痛抑制物質の作用強度を観察し、統計解析するなどの実験を展開。
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