目的1:術後痛モデルでの検討 SDラットを用いて、Brennanらの方法によって術後痛モデルを作成した。すなわちハロセン麻酔下に左後肢足底のかかとの部分に、約1cmの皮膚切開を入れて作成する。機械的アロディニアをvon Frey filamentsによって測定すると、強いアロディニアは術後3日まで続いたが、その後、術後7日にかけて徐々に消失した。腰部脊髄の免疫染色をおこなうと術後3日をピークに、マイクログリアとアストロサイトの活性化が認められた。選択的グリア細胞抑制薬であるfluorocitrate(1、0.3、0.1nmol)を術後1日に髄腔内投与すると、投与量依存性に機械的アロディニアを抑制することは、昨年までの研究成果で報告した。今年度の研究では、マイクログリアを特異的に抑制するminocyclineの効果を検討した。術後1日にminocyclineを髄腔内投与(100、50μg)してもアロディニアを抑制することはできなかった。腹腔内にminocyclineを3日間連続で投与(200、100mg/day)すると、脊髄でのマイクログリアの発現は抑制されたが、痛みは抑制することができなかった。 目的2:神経因性疼痛モデルでの検討 SDラットを用いて、Chungによって開発されたspinal nerve ligationモデルの変法であるL5脊髄神経切断モデルを作成した。この手術後1ないし2日から、神経切断側足底部に機械的アロディニアが生じる。神経切断直後から選択的グリア細胞抑制剤であるpropentofylline(10、3、1μg/day)を7日間、髄腔内に持続投与すると、投与量依存性にアロディニアを抑制した。神経節断後14日から7日間投与した群では、アロディニアは抑制されなかった。神経節断後60日から投与した群でも、アロディニアは抑制されなかった。
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