麻酔関連領域での判例で、1997年までに法律雑誌に掲載された判決を検討した。その内、全身麻酔症例、脊髄くも膜下麻酔症例で、説明義務違反に関連したものを検討した。説明義務違反は脊髄くも膜下症例で認められていた。2003年までの過去5年間の検討では、最高裁判所の判決が収集された。この検討では、周術期に関しては、患者側の充分な納得と、その説明内容を記録に残すことが重要と思われた。これらの把握をふまえ、説明すべき事項や範囲を含め、麻酔の説明文書の具体的文書を作成した。脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の文書を作成した。その作成に関しては、なるべくわかりやすい文章で記載した。また、これらの麻酔に伴う合併症の記載では、発生頻度とより危険性が高いものへの言及を試みた。しかし、その発生頻度に関しては、その基礎となる根拠となる論文が少なく、より具体的数値が記載でないものがあった。研究分担者は、これらの説明文書を麻酔関連領域ばかりでなく、臨床各科の同意・説明文書の編集に携わり、法的要件を満たす方針で臨んだ。また、研究協力者は、全身麻酔、硬膜外ブロックの説明文書の作成を試み、編集補助も行った。医療に伴う合併症などのリスクをどの範囲やどの程度にするか、その発生頻度を明確な基準で示すことは、現在、判例的には確立していないので、個々の症例によってその説明は異なると考えられる。また、同様に説明を行っても、患者の理解度は異なるので、患者サイドで如何に理解されているかを確認することも需要である。実際には、説明を行っても同意に至るまでの充分な時間、判断するまでの充分な時間があることも重要である。
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