研究概要 |
1)成人日帰り手術患者を対象とし術後回復遅延因子について検討した。回復遅延の主要原因は術後不快症状,社会的および組織運営上の問題であった。回復遅延患者では術後痛発症頻度が高く,日常活動性回復度自己評価および日帰り手術受容性が低かった。小児日帰り手術患者もほぼ同様であった。 乳癌手術後の夜間一過性低酸素血症についてセボフルラン麻酔とプロポフォール麻酔で検討した。手術当日夜間に一過性低酸素血症発症が高率(約40%)に観察された。麻酔法による発症頻度に差はなかった。低酸素血症発症患者では肥満指数が高かった。 セボフルラン全身麻酔下乳癌手術患者におけるα_2アドレナリン作動薬デクスメデトミジンの術中循環動態,術後嘔気嘔吐,術後痛,術後回復,自律神経活動などへの効果を検討した。デクスメデトミジンは,術中低血圧・徐脈発症頻度を上昇させ,術後交感神経活動を低下させたが,術後嘔気嘔吐・術後痛発症頻度を低下させず,術後歩行再開を遷延させた。 2)Bispectral index (BIS)を指標とした静脈麻酔薬プロポフォール自動投与システムを開発し,Monitored anesthesia careへ臨床応用した。BIS値維持の安定性に問題があり,さらに改良を進めている。 3)ラット気管繊毛上皮細胞を用いて麻酔薬・鎮静薬の繊毛運動への影響を検討した。静脈麻酔薬チオペンタール,ミダゾラム,デクスメデトミジンには繊毛運動抑制作用が見られなかった。ケタミン,フェンタニル大用量で繊毛運動亢進がみられた。ペントバルビタールは強力に繊毛運動を抑制した。揮発性麻酔薬イソフルランは強力に繊毛運動を抑制したが,細胞内cAMP濃度には影響を与えなかった。 生体ラットを用いて通常の麻酔用量のイソフルランとペントバルビタールの気道浄化能を比較した。ペントバルビタールはイソフルランに比べ気道浄化抑制が強力であった。
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