研究概要 |
1)日帰り手術後回復遅延の主要原因は第一に術後不快症状(主に術後痛,術後嘔気嘔吐(PONV),嗜眠・目眩・疲労感),次いで社会的問題および組織運営上の問題であった。回復遅延患者では術後痛発症頻度が高く,日常活動性回復度自己評価(RNA)および日帰り手術受容度が低かった。短期滞在手術に対する満足度の低い患者では,術後不快症状が多く,RNAが低く,受容度が低かった。短期滞在手術後約20%の患者に中等度以上の術後痛があった。乳癌短期滞在手術において,フェンタニル(Fen)併用セボフルラン(Sev)麻酔ではPONV頻度が高く回復が遅延した;全静脈麻酔(TIVA)ではSev麻酔に比べ術中の心拍変動(HRV)抑制・循環動態変動が少なく,PONV頻度が低く術後回復が早かった;Sev麻酔にデクスメデトミジン(Dex)を併用すると,術中低血圧・徐脈発症頻度が上昇し,PONV・術後痛発症頻度は変わらないが術後回復が遷延した;Sev「浅」麻酔は「深」麻酔に比べ,PONV頻度に差がないが,HRV抑制が少なく,覚醒が早かった。 2)Bispectral index(BIS)を指標とした静脈麻酔薬プロポフォール自動投与システムを開発した。TIVAでは手動制御に比較しBISを目標値近傍によりよく維持できたが,monitored anesthesia careでの制御は困難であった。 3)ラット培養気管繊毛上皮細胞において,チオペンタール,ミダゾラム,Dexには繊毛運動抑制はみられず,ケタミン・Fen大用量で方進がみられた。ペントバルビタールは強力に繊毛運動を抑制した。ハロタン,イソフルラン(Iso)は強力に繊毛運動を抑制したが,Sevではほとんど抑制しなかった。イソプレテレノールによる繊毛運動亢進をISOは抑制したが,cAMP量増加は抑制しなかった。Isoは細胞内ATP量に影響を与えなかった。
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