研究概要 |
TNF-αなどの炎症性サイトカインは肺傷害における炎症の指標として用いられてきたが、肺傷害の治療における位置づけは確立されていない。炎症性サイトカインを抑制することによる急性肺傷害の治療と保護的人工呼吸法の関連はこれまで研究されていない。本年度は急性肺傷害のモデルとして塩酸注入モデルの開発と実験条件の確立を行った。実験法は以下の通りである。Sprague-Dawley系ラットを用い、麻酔下に気管切開を行う。内径動脈に24Gカテーテルを留置した後、気管切開チューブを通して1規定塩酸を1.2mL/kg投与し肺傷害を作成した。肺傷害作成までの人工呼吸は吸入酸素濃度100%,PCV 10cm H_2O, PEEP 5cmH_2Oで行った。一時間後のPaO_2は平均150mmHgまで低下しており肺傷害が確認された。肺傷害作成後高頻度換気に切り替えた。条件は振動数15または30Hz、平均気道内圧10cmH_2Oとした。振動数の2群は無作為に分けた。振動数の違いにより肺胞レベルでの平均気道内圧に違いがでる可能性があるためpilot studyとして肺傷害作成後に30分おきに15と30Hzを切り替えて肺容量をbodyplethysmographで評価を行ったが肺容量に変化はなかった。(n=5)高頻度換気は両群とも肺傷害作成後4時間行った。4時間後のPaO_2は30Hz群が有意に高値を示したことから高い振動数を用いた方が高頻度換気においては肺保護作用が高いことが示唆された。肺内サイトカイン計測のため方肺で気管支肺胞洗浄を行った。残りの肺は病理組織評価のため固定の後、標本作製を行った。現在サイトカイン計測と病理組織評価を行っている。
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