研究概要 |
【目的】短時間虚血による虚血耐性現象におけるプロテアソームの関与を解明することを目的とした。 【方法】スナネズミの両側頸動脈閉塞モデルを用い、4群に分けた: (1)対照群:手術を施行後、両側頸動脈閉塞を行わず脳摘出 (2)Isc2群:2分間虚血3日再灌流 (3)Isc5群:5分間虚血3日再灌流 (4)PC群:2分間虚血3日再灌流+5分間虚血3日再灌流 スナネズミ雄を用い、自発呼吸下でイソフルラン1%、酸素30%、亜酸化窒素70%投与し両側総頸動脈を2分間ないし5分間遮断した。手術後ないし再灌流3日後にA.ホルマリン液で脳標本を灌流固定し提出、B.液体窒素で頭部を凍結させ、海馬を摘出した。虚血侵襲による海馬での神経細胞障害をA.からはHE染色により組織学的に評価した。またB.からは免疫ブロッティング法を用いて関連タンパクの量的変化を観察した。つまり、細胞骨格タンパクの1つであるα-fodrinの分解産物(BDP)および、プロテアソームのサブユニットであるα3,α5,α7,β3,β4を定量した。 【結果】A.対照群およびIsc2群では神経細胞傷害は認められなかった。Isc5群では海馬CA1全体に核濃縮が著明であり、一部空胞化を認めた。PC群では、神経細胞傷害がCA1に認められるものの、Isc5群よりも軽度であった。 B.BDPはIsc5群のみ他の3群と比較し著明に増加した。プロテアソームのサブユニットではIsc5群でα7のみ増加傾向を認めたが、その他に大きな変化は認めなかった。 【考察】HE染色およびBDPの変化から、海馬での神経細胞傷害を評価した。Isc5群と比較してPC群では短時間虚血による虚血耐性現象の発現が示唆された。プロテアソームのサブユニットではα7のみ増加傾向を認めた。プロテアソームのサブユニットのうち、α7が虚血再灌流の病態で海馬神経細胞傷害の機序に関与している可能性があると考えられた。
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