研究概要 |
女性患者において痛覚閾値の変化に最も影響する月経周期ないし閉経と,術後痛における患者自身による疼痛自己評価と鎮痛薬要求量との関連を検討した。 【方法】同意の得られた女性患者62名(40.8:SD13-2)を対象とした。術後鎮痛は持続硬膜外鎮痛(0.2%ロピバカイン4mL/hr)を全例行い,これに適宜フェンタニル(F)200mcg/day硬膜外持続注入,0.2%ロピバカイン持続注入量増量,ペンタゾシン(P)15ないし30mg筋肉注射,ジクロフェナク(D)25ないし50mg挿肛のいずれかで,10段階フェイス・スケール(FS)で5を超さないよう鎮痛を図り,かつFS<5でも鎮痛の要求があった場合は適宜投与した。術後50時間の鎮痛薬要求量をF100mcg=P15mg=D25mgの力価換算で計算した。閉経前患者は手術日と月経初日からの関係で,early stage(0-9days),mid stage(10-19),late stage(20-30)に分類し,比較検討した。 【結果】閉経前患者においては月経初日からの経過日数と鎮痛要求量の間にy=0.01×X^2- 0.167x+4.847(r=0.42)の相関をみとめた。stageで群分けした場合,midが3.7(SD3.2)でありlateが6.8(2.0)と有意差(P<0.007)を認めた。疼痛自己評価と鎮痛要求量の関係を直線回帰計算で検討したところ,midで決定定数(r^2)が最も高く(0.42)次いでlate(0.18),early(0.16)であり,閉経後は分散した(0.095)。 以上により,閉経前患者においては特に月経時ならびに月経周期後半において鎮痛薬要求が著しく増加することを念頭において,術後鎮痛の戦略を立てておくべきである。また,この時期と閉経後の女性は疼痛の表現と実際の痛みの問に乖離が存在する可能性が示唆される。
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