研究概要 |
Finkらにより提唱されたエチルピルビン酸(EP)は、抗酸化作用とラディカル除去剤として近年、動物実験で敗血症・低血圧性ショックなどの各種ストレスに対しての生存率を改善し注目されている(Crit Care Med 2003 Vo131, S51-S56)。しかし、EPの脳虚血をはじめとした脳障害に対する効果はまだ十分検討されていない。大分大学医学部共同実験施設のNMR装置(Bruker社製AMX300WB)を用い、ラット全脳スライス標本の高エネルギー燐酸NMR(^<31>P-NMR)スペクトルを長時間(12時間)安定して測定することが可能となっている。^<31>P-NMRでは脳スライスのエネルギー状態が良好だとクレアチン燐酸(PCr)のスペクトルが高値を呈し、虚血等ではPCrが低下し、PCr量の変化でエネルギー状態を経時的に把握することが可能である。 本研究ではラット全脳スライスに人工髄液潅流を1時間停止させる事による虚血刺激を与え、PCrが低下した状態から、再度人工髄液潅流を再開した際のPCrの回復度を検討している。まず、EPを全く投与しない対照群では、虚血再潅流後のPCrの回復は不良であった。EP(2mM)をスライス作成時から添加した全脳スライスでは、虚血再潅流後のPCrの回復は非常に良好で、ぼぼ虚血負荷前のPCr値に回復した。虚血刺激後の再潅流時からEP(2mM)を添加した場合も、対照群に比べPCrの回復が良好であった。平成18年度は更に例数を増加させ、更にEPの濃度を変化させてより詳細な検討を行う予定である。
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