研究概要 |
【目的】ピルビン酸はエネルギー代謝で重要な役割を持ち、また抗酸化作用とラディカルスカベンジャー機能を持つ。エチル化し安定化させたエチルピルビン酸(EP)の虚血に対する神経保護作用をエネルギー代謝的側面から検討するため、燐核磁気共鳴装置(^<31>P-NMR)を用い、高エネルギー燐酸であるクレアチン燐酸(PCr)の動態を検討した。 【方法】Wistar系ラット全脳より400μm厚の脳スライスを作成し、25℃の人工髄液(ACSF)にEP=2mMを加えた群(EP群)と対照群(C群)とで、ACSF循環を1時間停止後のPCr回復量をBruker社製AMX300wb^<31>P-NMR装置で測定した。 【結果】EPを虚血前に投与したEP群ではC群に比べ回復率が高かった(78.2±3.3% vs 60.8±1.9%; P=0.001)。EPを虚血後に投与してもEP群とC群で有意差は見られなかった(71.9±4.6%; p=0.059)。ACSF内に選択的グリア毒素であるフルオロクエン酸(FC,100μM)を前投与し、神経細胞優位にしたスライスでEPの効果を検討した場合は、EP群とC群で有意差は見られなかった(69.8±6.4% vs 70.0±4.5%; p=0.66)。 【考察】ラット全脳スライス虚血前にEPを投与することにより、脳保護作用を示したが、虚血後に投与しても効果は見られなかった。またFCにより選択的にグリアを阻害した環境ではEPの効果は見られなかったことより、EPは神経細胞だけでなくグリア細胞も保護することにより、虚血・再潅流時のグリア細胞が持っている神経細胞保護能力を向上させている可能性が示唆された。
|