平成18年度の実験結果 前年度、われわれは、糖尿病ラット群ではアンギオテンシンII(10^<-8>〜3×10^<-7>M)による血管収縮性が非糖尿病ラット群にくらべて亢進しており、揮発性麻酔薬であるセボフルランが濃度依存性にこれを抑制することを示した。今年度は、糖尿病による血管弛緩反応の減弱(血管収縮性の亢進)を内皮細胞傷害の観点から"血管平滑筋"細胞内機構について検討することを目的とした。 (研究概要)通常、内皮由来弛緩因子/NOはスーパーオキサイド(・O_2^-)により不活化される。糖尿病患者では、酸化ストレス増大の結果スーパーオキサイドが増加し、NOによる血管弛緩反応が減弱すると言われている。当初実験予定の内皮SOD(EC-SOD)活性測定方法の確立が困難であったため、糖尿病と同様に血管平滑筋細胞内スーパーオキサイド(・O_2^-)過剰産生状態を作成し検討することとした。 (1)揮発性麻酔薬であるセボフルランによる濃度依存性のアンギオテンシンII収縮の抑制の細胞内機構の検討 (細胞内カルシウムイオン濃度測定)有意な変化がみられなかった。 (Western blot法)Protein kinase Cの発現を抑制した。 以上の結果より、セボフルランは血管収縮タンパクのカルシウム感受性を抑制することが示唆された。 (2)SOD投与による血管弛緩反応のreversibilityおよび麻酔薬による影響の検討 われわれは、ラット摘出血管におけるニトログリセリン耐性発現モデルがニトログリセリン(10^<-8>M)30分間暴露により作成されたが、 ・細胞膜透過性の高いラジカルスカベンジャー投与やESR法による細胞外検出法を用いた結果、血管平滑筋細胞内においてスーパーオキサイドが過剰産生されることを確認した。 ・その耐性発現がセボフルラン同時暴露により増強されるがイソフルランでは影響されなかった。 ・スーパーオキサイドおよびセボフルランが血管平滑筋細胞soluble guanylate cyclaseを抑制することが示唆された。
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