研究概要 |
糖尿病および非糖尿病ラットの大動脈および他臓器血管平滑筋を用いて、内因性血管収縮物質(ノルアドレナリン、アンギオテンシンII)による血管収縮作用、平滑筋細胞内カルシウム濃度、蛋白リン酸化酵素isozyme活性を測定し、慢性高血糖による血管平滑筋収縮・弛緩機構の特性を明らかにし、これに対する麻酔薬の影響を検討することを本研究の目的とした。その結果、 1.糖尿病ラット群では、アンギオテンシンII(10^<-8>〜3×10^<-7>M)による血管収縮性が非糖尿病ラット群にくらべて亢進しており、揮発性麻酔薬であるセボフルランが濃度依存性にこれを抑制した。一方、イソフルランではこの抑制は認められなかった。 2.上記の現象に対して細胞内機構の検討を行った結果、細胞内カルシウム濃度測定で有意な変化がみられずWestern blot法によりProtein kinase Cの発現が抑制されたことより、セボフルランは血管収縮蛋白のカルシウム感受性を抑制することが示唆された。 3.AngII,PEによりMLC,CPI-17,MYPT1/Thr853,/Thr696のリン酸化が一時的に増加した。 4.セボフルランとイソフルランはAngII,PEによるMLCリン酸化を濃度依存性に抑制した。 5.バゾプレッシン惹起等尺性張力変化に対する揮発性麻酔薬の影響を検討した結果、セボフルラン、イソフルランともに濃度依存性に抑制作用が認められた。その機序について各リン酸化酵素の阻害薬を用いて調べた結果、Rho kinaseの関与が認められた。
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