これまでの研究により、短時間(30分)の無酸素無糖培養(OGD)後にはミトコンドリア膜電位が過分極し、長時間では膜電位は脱分極することを示してきた。さらにこの膜電位とapoptosisおよびnecrosisの死の形態に関連があることを示してきた。平成17年および18年はこれまでの結果を受けて、ミトコンドリアによる細胞死の調節機構を細胞内Ca^<++>濃度上昇抑制作用、およびsignaling pathwayであり、apoptosisの調節機構を持つAktのリン酸化に注目し、研究を進めた。 1ミトコンドリアの細胞内Ca^<++>緩衝作用 実験モデルは、30分120分のOGDを負荷した培養細胞を用い、グルタミン酸を負荷することにより細胞内Ca^<++>濃度を上昇させ、その際のミトコンドリア内Ca^<++>濃度を同時にモニターした。その結果、30分OGDの細胞では、細胞内Ca^<++>濃度は、ピークに達した後速やかに減少した。同時に測定したミトコンドリアCa^<++>濃度は上昇を続けた。OGDを与えていない細胞と比較してミトコンドリアCa^<++>緩衝作用が強いことが示された。一方、120分OGDでは、グルタミン酸負荷による細胞内Ca^<++>濃度上昇も少なく、ミトコンドリアCa^<++>濃度上昇も少なかった。同時に評価したミトコンドリア膜電位は30分OGDでは他の群と比較して高く(過分極)、120分OGDでは低かった。このことより、30分OGDでのミトコンドリア膜電位の過分極は細胞内Ca^<++>濃度上昇を緩衝する作用をもたらしており、短時間虚血後に見られる虚血耐性(ischemic preconditioning)との関係が示唆された。 2 0GD後のAktリン酸化 30分OGD後AKtのリン酸化が促進され、120分OGD後ではリン酸化が抑制されることがELISA法により確認された。現在、Western blottingにより確認を行っている。
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