心臓リズムは、刺激に対する脳の認知またはその無意識反射を含む一種の生体応答反応であるとの立場から、この心拍リズムを解析することによって脳の記憶認識面のみならず感情、情動といったいわゆる`こころ'の面の情報も含まれでいると考え、特に後者の検出に努めできた。その目的達成のため、本研究課題で入手したリアルタイム心拍変動のゆらぎ解析システム、殊に連続的な心拍リズム変動を実に1/1000秒という極めで微細かつセンシティブに取り込める機器、ソフトを用いて初めてこれらの解析が可能となる方法を開発できた。そこで本年度は新たなデータ収集の一方で、昨年度までに得られ保存しでいた各種元データの中から、音樂に対する情動反応を中心に、主として認知応答反応としての心拍リズムの中に含まれでいるはずのこれら情動反応を抽出できる指標で検討を重ねた。その結果、従来の自律神経機能である交感神経、副交感神経機能と共に、自律神経バランス指数という新たな指標を案出することに成功、種々検討を重ねた結果、上記情動反応を評価可能な指標となりうることを突き止め、そのことに関する論文も海外誌「J Clin Monit Comput」に投稿、採用された。今後多くの研究者の注目を得るのを期待しでいる。そして引き続きこの新しい心拍リズム変動解析による情動反応評価法を利用してICUで死亡直前の患者の脳の状態(所謂臨死体験中の幻想現象類似)を探るため、レム睡眠時の夢や全身麻酔中のパラメータ、音楽の心地よさのデータとも対比し、未だ知られていない上記現象解明も試みた。この目的には長時間心拍変動収集にはアクテイブトレーサ(AC301A)を用いて連続24時間以上計測した複雑かつ膨大な時系列データの解析を進め、日本集中治療医学会学術集会で報告、また日本麻酔科学会学術集会では音樂情動反応を著名に示した症例に関しでの上記解析方法並びに脳波によるその裏附けデータを含めて報告することができた。
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