研究概要 |
疼痛のメカニズムは末梢,脊椎レベルでの機序が明らかとなり,イオンチャネルやG蛋白共役型受容体(GPCR)が疼痛発生に関与しているという報告がなされてきた。しかし,吸入麻酔薬や静脈麻酔薬が脊椎レベルでこれらの受容体やイオンチャネルにどのように影響を与えて鎮痛作用を引き起こしているかについては未だにはっきりした結論が出ていない。 脊髄後根神経節(Dorsal Root Ganglia以降DRG)細胞は各種の痛覚伝達に関する神経伝達物質を多く含み侵害刺激の神経伝達において重要で,麻酔薬の作用部位になっていると考えられるが総合的な解析は進んでいない。 今年度は,脊髄レベルでの麻酔薬の抗侵害作用を総合的な解析を行う目的で培養DRG細胞とアフリカツメガエル卵母細胞系を用いて以下の研究を行った。 1.培養DRG細胞におけるサブスタンスP(Sub P)刺激による細胞内Ca^<2+>の変動に対する麻酔薬の影響を解析した結果、麻酔薬ハロセンが、Sub P刺激によるCa^<2+>の上昇を抑制する結果を得た。またアフリカツメガエル卵母細胞系を用いてSub P受容体を吸入麻酔薬の多くは抑制する結果を得た。 2.電位依存性Naチャネルやニコチン性アセチルコリン受容体にどのように影響するかも解析し、麻酔作用をもつアルファキサロンや麻酔薬の一部が抑制することを確認した。現在は、培養DRG細胞を用いて麻酔薬がグルタミン酸受容体にどのように影響するかをパッチクランプ法を用いて解析しているところである。 今後はCGRP受容体にいかに作用するかを検討する。最終的にはDRGの疼痛刺激伝達物質の受容体としてSub P受容体とCGRP受容体のノックアウトマウスを用いて行動薬理学的に麻酔薬の抗侵害作用がどのようになるかを検討している。以上の検討をすることにより,麻酔薬の鎮痛作用機序を総合的に解析し麻酔薬の脊椎レベルで作用機序にGPCRが多いに関与していると考えられる結果が得られた。
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